「鼻水賢人」

2011年10月29日(土曜日)
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「鼻水賢人」


 わしは帰ってきたぞ。でも今回は、前回ほどじゃないんじゃ。そんなに盛り上がらない。

 わしの最新の伝授情報は、股くぐりじゃ。大人の男の股をくぐると、金運と恋愛運がアップじゃよ。お薦めじゃ。

 わしもこの屈辱的な方法を考案した時は、どうかなと思ったのじゃが、屈辱を屈辱と思わないときに運が開けるんじゃよ。映画、酔拳ジャッキー・チェンじゃったと思ったが、あの時、ジャッキーの運はアップしたのじゃよ。皆も気がついたかな? この世に股くぐりという屈辱的なこと以上に運がアップすることはないんじゃよ。

 どうやってこの、伝授情報を得たかって? わしは、その時、掃除機をかけていたのじゃが、洗濯したカーゴパンツがかけてぶら下がっていたのじゃ。そのパンツの下をくぐらないと前へ進めなくなったのじゃ。わしは自分のじゃがパンツの下をくぐったのじゃ。その時の屈辱感が感動的じゃった。自分のだから屈辱しないんじゃないかって。そんなことはない。すべてのパンツくぐりは、股くぐりにつながるのじゃよ。自分のパンツをくぐるのにこんなに屈辱的なら、他人の股をくぐる屈辱がどんなに大きく、強いことか察したのじゃ。じゃから、股くぐりは金運、恋愛運アップの決定的な技術なのじゃよ。この重要な伝授を与えてしまったわしは、また旅に出て修行せにゃならん。新しい技を修めるまで家には帰らんつもりじゃ。


 屈辱感が大事なのじゃよ。男が男の股をくぐる、これは大事じゃよ。わしは自分のパンツの股をくぐっても屈辱感を持ったからな。みじめさが原動力じゃ。感じることはどこにつながっていくのじゃろうなあ。見たり聞いたり感じたり、そういうことはどうなってくのじゃろう。消費じゃないぞ、感じることじゃ。わしらはどこに運ばれていくのじゃろう。ただ土に帰るだけなのじゃろうか。人間に生まれ、人間活動をし、人間の中で生かされ、場所を与えられているわしらは人間であることで幸せになるのかもしれん。人間活動はすごいことなのかもしれん。その幅と厚さと高さは一人の人間の知るところではないんじゃろう。わしのような、頭のよくない人間にも薄々は感じるんじゃよ。人間の端くれをやらせてもらっているわしにも感じるところはあるのじゃよ。